2)光変調
複数点の生体情報を同時に取得しようとした場合に、あるセンサーに到着した光が何処から来た光であるかを分離できなくてはなりません。そこで利用する技術が光変調技術です。本装置ではこの光変調に最新のデジタルテクノロジーであるスペクトラム拡散多重変調技術を採用しています。
本装置を含めてNIRS(近赤外分光分析法)では一般的に光源として連続波(CW: Continuous Wave)の近赤外線を使っています。CWの光多重変調方法として従来からTDMA(Time Division Multiple Access:時分割多重)あるいはFDMA(Frequency Division Multiple Access:周波数分割多重)が知られています。本装置で採用しているのは従来手法とは全く異なるCDMA(Code Division Multiple Access:符号分割多重)を採用しています。CDMAは、その原理から一般的にはスペクトラム拡散変調と言われています。
TDMAは各光源をミクロの単位で制御し、ある瞬間には特定場所の光源だけが光を射出する方法です。光を受けたセンサー側としては、時間の管理をすることで何処の位置から来た光信号かを分離できます。変調方法としては極めて簡便というメリットを持っていますが、外乱光に影響されやすいとか多チャネル化に対して生体信号帯域が制限されるといったデメリットがあります。
FDMAは各光源の光を、別々の周波数で光変調し射出する方法です。光を受けたセンサー側としては、各位置からの複合された光信号を電気信号に変えた後、周波数フィルターで分離することで、何処の位置から来た光信号であったかを分離できます。TDMAに比べて外乱光に強くなり、また同時刻測定であるメリットがあります。が、精密な周波数フィルターの設計が必要なこと、回路規模が複雑となること、ある規模を超えると多チャネル化は極めて難しくなること、というデメリットをもっています。
一方、CDMAすなわちスペクトラム拡散変調は、最近の携帯電話あるいはカーナビのGPSに使われている最も進んだ変調技術です。乱数を使って変調する方式であり、その理論の本質を理解するのは難解ですが、外乱光に強く同時刻測定であり、多チャネル化に対しても大きな問題がなく、かつ実現回路規模はそれほど大きくならないというメリットをもっており、将来性のある光変調技術です。
下図にて、時刻1では光源1だけが点灯、その光を各受光点で取得する。以下同様に時刻2では光源2、時刻3では光源3と時間経過とともに順に点灯させていく方法。
下図にて、光源1~5は異なる変調周波数で同時に点灯を繰り返す。同時に各光源が点灯していても、各光源からの光信号の変調周波数が異なることを利用して各受光点では位置とその光信号強度を特定する方法。
下図にて、光源1~5は異なる乱数によって変調し点灯を繰り返す。同時に各光源が点灯していても、各光源からの光信号の乱数コードが異なることを利用して各受光点では位置とその光信号強度を特定する方法。
各方式の特徴 (光測定で利用する場合)
光変調方式 | TDMA(時分割多重) | FDMA(周波数分割多重) | CDMA(符号分割多重) |
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原理 | 簡単 | 複雑 | 難解 |
同時測定性 | Δ | ||
多チャネル化 | Δ | Ο | |
高SN化 | 帯域制限 | 帯域制限 | 各種方法がある |
外乱ノイズの影響 | 大(変調手段による) | 小 | 極小 |
変復調回路 | 簡単/規模小 | 複雑/規模大 | 簡単/規模小 |
実用化例 | インタ-ネットの伝送パケット | 地上波デジタル放送 (13セグメントOFDM) |
携帯電話 GPS(カーナビで利用) |
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