1) 生体情報の取得原理
ランベルト・ベールの法則(Lambert- Beer law)に従えば、ある濃度の溶液への入射光をIin、溶液を透過した光をIoutとすると以下の式が成り立つことが知られています。
-Log(Iout / Iin) = 溶液の吸光係数(ε) x 溶液の濃度 (C) x 距離 (D)
すなわち、予め特定波長での溶液の吸光係数εが求まっていたとすると、Iin、Iout、Dを測定することで該当溶液の濃度Cを求めることができます。
ランベルト・ベールの法則を拡張して散乱のある媒体に適用したのが下記のモデファイド・ランベルト・ベール (modified Lambert-Beer Law) 則です。
-Log(Iout / Iin) = ε x C x D + S
ここでSは散乱による光量の減衰を,D は平均光路長を表します。
溶液内の (溶質の) 濃度が C から C + ΔC に変化したとき,透過光量が Iout + ΔIout に変化したとすると
-Log[ (Iout + ΔIout) / Iin] = ε x (C + ΔC) x D + S
となるため,散乱による光量の減衰 S が変化しないとすると上の2式より次式となります。
-Log[ (Iout + ΔIout) / Iout ] = ε x ΔC x D
特定波長 λ の生体への入射光のうち、生体内で吸収と散乱を受けて生体外に戻ってきた光量とその変化量を lout(λ) と
-Log[ (Iout(λ) + ΔIout(λ)) / Iout(λ) ] = (εoxy(λ) x ΔCoxy + εdeoxy(λ) x ΔCdeoxy) x D
この式から目的の OxyHb の濃度変化量 ΔCoxy、DeoxyHb の濃度変化量 ΔCdeoxy を求めます。
ここで ΔCoxy、ΔCdeoxy と求める変数が2個あるので、本装置では下図に示す770nmと840nmの2波長の近赤外線吸光係数を使うことで求めています。
-Log[ (Iout(λ840) + ΔIout(λ840) ) / Iout(λ840) ] = (εoxy(λ840) x ΔCoxy + εdeoxy(λ840) x ΔCdeoxy) x D
-Log[ (Iout(λ770) + ΔIout(λ770) ) / Iout(λ770) ] = (εoxy(λ770) x ΔCoxy + εdeoxy(λ770) x ΔCdeoxy) x D
実際には光路長Dが規定できないので D の積を付けたままを解としています。すなわち、D x ΔCoxy、D x ΔCdeoxy を解としています。
さらに、上記式より求まったD x ΔCoxy、D x ΔCdeoxyから
D x ΔCoxy + D x ΔCdexoy = D x ΔCtotal
と計算してトータルヘモグロビン (ΔCtotalHb) の濃度変化量としています。
ヘモグロビン変化注1 (D x ΔCoxy、D x ΔCdeoxy、D x ΔCtotal) の単位としては、光路長が規定できないので光路長を含んだままのmM·cm (ミリモル·センチメートル) あるいはmM·mm (ミリモル·ミリメートル) が使われます。
注1: | 今後、D x ΔCoxy、D x ΔCdeoxy、D x ΔCtotalのことをヘモグロビン変化 (Hb Change) 、正確な表現としてはみかけのヘモグロビン濃度変化光路長積 (The product of change in the apparent Hb concentration and the optical pathlength) と呼ぶようにします。簡略化した記号表現としては、それぞれΔCoxy·L、ΔCdexoy·L、ΔCtotal·LあるいはΔCo·L、ΔCd·L、ΔC·Lを使います。 |
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